周防大島の竹林

まず最初に、竹林情報の大御所様を紹介します。

竹のはなし:林野庁 (maff.go.jp)

竹の利活用推進に向けて:林野庁 (maff.go.jp)

身近で不思議なタケの生態に迫る!:農林水産省 (maff.go.jp)

はい、荒廃竹林を語る上では上記3つの情報ページは素通り出来ませんので、是非ともご覧下さい。特に、「竹の利活用推進に向けて」報告書(平成30年10月作成)(PDF : 1,196KB)では、各県の竹林面積率が報告されてますので、非常に勉強に成ります。

他には、ウィキペディア先生もお勧めです。

竹林 – Wikipedia

また、荒廃竹林整備に力を注いで居られる仲間の方々を紹介させて下さい。

TEGO|竹の魔法で未来を創る。 広島県呉市)

山口県 竹林伐採里山保全三輝トラスト株式会社 (山口県宇部市)

TEGOさんは広い視野と知見で頑張って居られます。
三輝トラスト(株)さんは荒廃竹林整備にお力を注がれてます。
上記サイトを訪問されてエールを送ってあげて下さい。

なお、竹1本、地下茎1筋、筍1個に関する各個の情報に就いては、章4「環境/季節」内の竹・筍トレビアでご紹介致しますので、まずは竹林(面)からの理解を深めて下さい。 

○ 荒廃竹林

周防大島での多くの荒廃竹林は、元は蜜柑園だった所が多く有ります。竹林の多くは孟宗竹でして、非常に強くて高く成長する繁殖力を持ち、其処に生えていた杉や他の樹木より高く成長し、陽を奪って枯らして仕舞います。畑、更には廃屋を呑み込んで、其の土地を孤立させて仕舞った場所も多く有ります。昔は蜜柑の収穫作業に使った山小屋が、今は何本もの竹が床から突き抜けて、針山に刺さった如くです。

少し昔の話を紹介しますと、竹・筍を使った産業を興す為に孟宗竹の植樹を推奨した時代が有ったとの事です。まぁ、普通の樹木なら育てるのに守が必要で、守が居無ければ育た無かったりし、育っても1本がその場で大きく成るだけで、横への浸食はしません。しかし、孟宗竹の竹林は放置すると四方に地下茎を張って、止まる事無く浸食を拡げます。

以下のショットは或る荒廃竹林です。いざ踏み込んで、「さぁて、何処を進んで向こう側に行こうか・・・」と溜息が出ます。

竹林は概ね5年位も放置されますと、其れ迄に勢力を張っていた7年生以上の古参竹達が次第に枯れ出し、枯れて数年後には根元近くから腐敗してボコッと折れて、折り重なる様に成ります。猪でも此の荒廃の地は自由に動けず入るのを遠慮する様です。他の植物が生える余地は無いし、其処に住む虫も何故か減ります。多様性が無く成ると、近寄る生物も限られる様に成り、自然体系ががらりと変わります。

なお、猪は荒廃竹林には入ら無いとお伝えしましたが、荒廃の程度に依りますね。上の写真の竹林は進軍する為に折り重なる竹を1本ずつ動かし排除します。此の時に他の枯れ竹が崩れて来ないか確認し乍ら進みます。其の時、足元も確認しますが、動物が棲み処とした痕跡を見付けた事は有りません。まぁ、竹林の端っこ辺りに寝床として利用してたかもしれませんが、奥迄に入り込んだとは思え無いですね。此れ程に周防大島の竹林は荒廃していると考えます。

拙者は、此の光景を「竹の屍の林」と呼んでます。死んだ竹が散在してますので、どう表現し様にも、良い言葉は当て嵌まりませんよね。

上のショットの場所は石垣で整備されて有り、元は畑だったとの事です。平地ですので、進路を阻む倒れた枯れ竹を電動チェーンソーで刻んで進むのは、まぁ割と簡単です。でも、斜面ですと足元が不安定で地滑りが起き易く、そう簡単には切り進めません。

3年も荒廃竹林に向かってますと、慣れですね、「あの陽に向かって行けば良いのかな。行くぞ、愛機、宜しくな。」とハイヨー、シルバーっ!的に突撃してます。あっ、勿論、実際はスリー・マン・セルで互いに安全確認をし乍ら、ゆっくりと進んでます。惨状を前にすると溜息が出ますので、気合が必要と言いたい。

此の上のショットは、スリー・マン・セルで取り合えず抜けれる道を作った後の1枚です。二日間を要しました。見た目、少しだけ何か綺麗に成った気がしません? 幅員1mの小径が出来ればチッパーが入れますので、粉砕処理が手際良く出来る様に成ります。枯れ竹を退かしただけの様に見えるかも知れませんが、法面に立て掛けたり、平地に竹の向きを合わせて積んでます。次の工程の為に、丁寧さが必要です、ね。

なお、年が明けて2月頃に下見に入りましたが、此のチッパー道の至る処が猪に掘り起こされ(耕され)、ホントにアチコチ😖に排泄物(はい、💩です)が設置されてました。真っ黒でデカっ! でも、法面に立て掛けた枯れ竹を崩す訳でも無く、横に積んだ竹を動かす訳でも無く、チッパー道以外の場所には手付かず。此れが猪でさえ手を付け無い周防大島の荒廃竹林です。

○ 木を枯らす孟宗竹

周防大島の傾斜地に有る段々畑は、曽ては蜜柑園だった事が多いです。其の周りには防風を兼ねた杉が、里道に沿って植えられたりしてました。で、時に以下の様な光景に遭遇する事も有ります。

里道に沿って杉が十数本植樹され、其の内の1本の杉が枯れて倒れ、丁度、水平で竹に支えられて止まってるのです。里道は法面に沿って有るのですが、此の杉は隣の杉に向かって倒れ、最後は数本の竹で真剣白刃取りの如くガッシと受け止められ、真横で空中に浮いてる感じです。

ココ見て見てぇ! て、云いたいくらいに根元から倒れて真横です。左隣に見えている杉も実は枯れてます。そして、其の先10mの所に有る杉も枯れてます。次はコイツも倒れるんだろうなって感じですが、綺麗に竹に支えて貰える保証は無く、非常に危険で看過出来ません。ただ、数tも有る重い代物ですので、撤去するにも充分な準備が必要です。

 

 

 

 

 

此の杉は15m位でしたが、孟宗竹は更に高く18m以上に伸びます。陽を奪われた杉は枯れ、此の様に倒木、又は掛かり木に成り、危険な存在に変わります。密集した竹林で掛かかり木に成ると、掛かっている竹を順番に倒し乍ら、安全に作業を進めなければ成ら無いので面倒な工程と成ります。

 

竹は地下茎を拡げ乍ら、其の地上に生える木々を枯らして行きます。ですので、放って置く事は出来ず、荒廃を無くす必要が有ります。何を言っているかと申しますと、竹林の拡大を止めるには、中心部の荒廃を無くせばよい訳です。中心部で竹の死骸である枯れ竹が積みあがって仕舞うと、陽の光を求めて新たな場所へ地下茎を侵略させる訳ですね。ですので、荒廃を整備し、除伐を進めて空間管理を施すと、元の中心部に陽が差す様に成り、竹は侵略を止めます。

○ 荒廃竹林の危険要因

或る斜面の樹木が孟宗竹に取り囲まれて、其の後、何も起こらなければ良いのですが、恐らく数年後には地滑り災害が起きると考えます。地下茎が巡るのは地下50cm位迄です。そして、瀬戸内の島々や海岸線付近は真砂土と云う雨に流され易い土壌です。孟宗竹に囲まれた樹木は光を失い枯れます。枯れると云う事は根迄死ぬ事ですから、地下深く根で支えられていた斜面は踏ん張りを失う事に成ります。

皆さんは覚えて居らっしゃるでしょうか。2014年(平成26年)8月、そして2018年(平成30年)7月の大雨による広島各地での土砂災害を。あの各地で起きた土砂崩れで多くは竹林が滑る様に崩れて発生した事を。

放置して荒廃した竹林には太くて背の高い孟宗竹が密集し、其の間を枯れた竹が折り重なってます。雨が降ると、折り重なった枯れ竹は水を吸って重たく成ります。地下茎は地下50cm程度の所で編んだ様に巡らせて居るので、絨毯が滑る様に竹林全体が一気に滑り出して崩れます。周防大島でも地滑り/崩れは多く有ったのですが、人が亡くなった災害では無かったので報道はされませんでした。

荒廃竹林は、入る事すら厄介で危険ですが、放置して見放すのも危険なのです。

孟宗竹の栽培を推した過去が有り、周防大島に非常に多くの竹林が残り、人々の高齢化で管理機能が弱まり、荒廃竹林が日々拡大してます。平地が少ない島ならではの地形から、急傾斜の土地が開墾されたのが瀬戸内の島々です。其の場所に、荒廃竹林が拡がっています。